発作性心房細動 ~いかにして動悸を起こす犯人を捕まえるか~
今回は、以前もお話しした不整脈の一つ『心房細動』に関してのお話しです。
心房細動は、心臓内に血栓ができ、それが流れて脳の血管に詰まることにより脳梗塞を起こします。
巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄監督が、この心房細動による脳梗塞で重度の麻痺が残り、後遺症に苦しみました。
そのため、心房細動においては、いかに早く発見して脳梗塞を防ぐかが重要になります。
心房細動は、発症初期の頃は発作性心房細動と呼ばれ、頻度も低く短時間しか発作を起こさないため、気付きにくく発見が困難です。
普段は全く正常な脈であり、ある時突然、脈拍が120-140/分と速くなり強い動悸を感じますが、持続時間は数分間、初期には多くは数時間以内に自然に停止し、正常な脈に戻ります。
そのため、患者様はしばしば急に動悸が起きて胸が苦しくなったと来院されますが、来院された時には自然停止して元に戻っていることが多く、心電図などの検査をしても正常な脈であり、問題ないですと言われて診察が終わってしまいます。
後日、24時間装着するHolter心電図などを行うこともありますが、月に数回しか動悸発作が起きない人では、24時間心電図を記録しても、装着している日には何も起きずに検査は異常なしとなってしまうことも多いのです。
つまり、発作性心房細動は最初は隠れた不整脈であり、いかにして犯人のしっぽを捕まえるか、それこそが大変なのです。
我々、循環器医も初期には心房細動という犯人を捕まえられず、悔しい思いをすることも多々ありました。
ですが、近年、医療以外の分野からも腕時計型の心電計など新たな道具が開発され注目され始めています。
まだまだ開発段階ですが、我々も日々、そのような機械の発達に助けられながら、より良い医療を提供できるように変化していければと願っています。